隣を見た、ちゃんと伝えたくて顔を見ようと思って…

「……。」

笑うんだ。今、笑うんだ。

「俺は最初からナノしか見てない」

私の手を握る、そのままグイッと引っ張った。

「わっ」

上に引っ張られたからそのまま立ち上がってその場に立つ形になった。

「真っ直ぐ立つ時は胸を張ろうとしないで肩を下げて肩甲骨を背中の中心側に寄せるイメージで立つんだ」

胸を張らないで肩を下げる、肩甲骨を寄せて…

「そう、それでいい」

ぎゅっと手を握られたまま、だから私のドキドキも止まることがなくて。

「俺はナノがいい」

見つめられた瞳に息を飲んで。

「まぁ歩き方はまだまだだったけど、ウォーキング中の手の振り方は悪くなかった」

それはひたすらに動画を見た甲斐があったって、ちょっとだけ思った。動画を見て、指先まで神経が行き届いてるなぁって思ってたから。

「ナノ」

「…はい」

「改めてよろしく」

「!?」

グッと引っ張られた繋がれたままだった手を、だからそのまま田所一成の胸の中に飛び込んでしまって。

「ちょっとなっ、何してるの!?」

ぎゅーっと抱きしめられた。

「何って…あいさつ?フランスの」

「ここ日本だし!てゆーかよろしくって言うたびにこれするのやめて!!」