「あの日もそうだった、初めてナノを見た日…」

それはたぶん、田所一成がヘリコプターで現れた時…今思い出してもとんでもない状況だったと思うけど。
でもそれだけ、記憶に刻まれて心に残ってる。

「落としたメガネを返した時に思ったんだよ、やっと見付けたって」

あれは…、ただ見えなくて。あとちょっと邪魔だなってイラッともしてたかな、それで睨みつけちゃっただけ…

「そんな…大それたことじゃないでしょ、シンプルに目が悪かっただけだよ」

目が悪い人が見えなくてつい人相が悪くなっちゃうとか睨みつけちゃうのはあるあるだもん、それをそんなふうに言われても。

「言っとくが、睨まれたのがよかったとかじゃねぇからな俺はどちらかと言うと責めたい」

「そんなことは聞いてないし!」

くすっとまた笑った。たぶん、ちゃんとは見えてないけど。

「お前の目には惹きつけるものがある」

メガネを私にかけ直した。だからまたよく見えるようになって、田所一成のことがよく見えた。

「だから俺は絶対にナノを諦めない」

その表情はやっぱり笑ってた。