「!?」

そっと田所一成の手が私の頬に触れた。俯いたままだった私の顔をグッと前を向くように起こした。

あまりの距離の近さにドキッと胸が鳴る。

背の高い田所一成の顔が目の前にあったから。

「俺はお前の目がよかったんだよ」

え…目?って何… 

グッと顔を固定されたまま上を向かされる。勝手に背筋が伸びて姿勢がよくなっていくみたい。

「いいか?モデルは服が主役だ、自分を消してこそ真のモデルだ」

田所一成の左手は首の後ろ、右手は頭を支えるように顎を掴んで、動けない私はただ上を見るだけで。

その距離10センチ、田所一成との距離は10センチ。

「でも服を見てもらうにはまずモデル自体を見てもらうことが必要だ。だけど表情は邪魔しちゃいけない、無表情で自分を繕って…そんな中で唯一目だけは演じられる」

目だけは演じられる…?

「お前はそれを持ってたんだよ」

持ってた?
何を言われてるのかサッパリわからないけど、それって一体…

「だから…あ、メガネはいらないか」

田所一成が私のメガネを取った。見えないけど、メガネ取られたらこの距離でもぼやっとしか見えなくて。

フッと田所一成が笑った。

「その目がいいんだよ」

「え…?」