まだ何もしてないのに緊張が走る。

強引でめちゃくちゃなのに、真剣な瞳をしていたから。 

それほど大切なことなんだって。

でも、だからこそ私には…

「お断りします」

頭を下げる、深々と。
そんなこと私にできるわけないもん。

「……。」

頭を下げて数秒、何も返事がなくて少し不安になる。

え…、いつまでこの体制でいればいいの?
でも別に悪いことしてるわけじゃないもんね、許してもらうとかそーゆうんじゃないから…

顔を上げる、もうこれで話は終わりだと思って。

「俺はお前以外考えていない」

真っ直ぐ私を見てた。息をするのにも緊張するぐらい、刺すような瞳で。

「そ…っ、そんなこと言われても無理です!そんなのやったことないし、やれる気もしないしっ」

「それはやってみなきゃわからないだろ」

「わかるから!もっとちゃんとして人に頼んで…っ」

あまりにぶれない瞳は私の方が負けそうになって、一瞬視線を逸らしかけちゃって息を飲んだ。

「どうして私なの?」

一寸の迷いもなく答えが返って来た。

「俺の理想にピッタリだったから」

そんなこと言われるのは初めてで、次の言葉が出て来なかった。

私の前に立ち上がる、机に手を付いて身を乗り出して手を伸ばした。
ドキドキと心臓が震え出して、何が起きるのかと思うとメガネを取られるように外された。視界が悪くなってつい目に力が入ってしまう。

「いい目だ」

「え?」

ぼやける視界でどんな表情をしてるのかわからないけど、たぶん笑ってた。

「俺に選ばれたんだから自信を持て」

そんなこと、言われても。

モデルなんてやったことないし、学祭とは言えランウェイを歩くなんて荷が重すぎる…そんなこと、私の人生に絶対ありえないことなんだから。