二年後、マリナはアステール帝国の学園を卒業した。
 この日のアステール帝国帝都はとても賑わっていた。
 マリナとアルジャノーンの結婚式が行われるのだ。
「新郎アルジャノーン・アステール。貴方は健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、妻となるマリナ・インテクルースを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「誓います」
 真っ白なタキシードに包まれたアルジャノーンは、マリナを見た後迷いなく頷いた。
「新婦マリナ・インテクルース。貴女は健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、夫となるアルジャノーン・アステールを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います」
 純白のウェディングドレスに身を包んだマリナは、アルジャノーンに目を向けた後ゆっくりと頷いた。
「では、誓いのキスを」
 牧師の言葉にマリナは少し緊張してしまう。

 アルジャノーンと何度かキスはしたことがあった。しかし、いつも緊張して真っ赤になってしまうのだ。
 アルジャノーンはそんなマリナを可愛いと愛おしげな目で見てくれる。

「マリナ」
 アルジャノーンはゆっくりとマリナのベールをめくる。
「アル……」
 緊張して少し目をそらしてしまうマリナ。
「俺を選んでくれてありがとう」
 アルジャノーンの紫の目は、まっすぐマリナを見つめている。
「こちらこそ」
 マリナは少し照れながら微笑んだ。
「愛してるよ、マリナ」
「私も、愛しているわ、アル」
 二人の唇が、ゆっくりと重なった。
 それと同時に、祝福の声が大きくなる。
「これにより、二人は神の名の下、夫婦となりました」
 マリナとアルジャノーンは正式に夫婦となったのだ。
「これから末長くよろしく、マリナ」
「ええ、こちらこそ。アル、これから末長くよろしく」
 二人は幸せそうに微笑んでいた。


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「あ! 皇太子夫妻だわ! おめでとうございます! こっち向いてください!」
「わあ! 美男美女で素敵だわ!」
「俺達にも幸せのお裾分けがありそうだな!」
 結婚式を終えたマリナとアルジャノーンは、結婚パレードで馬車に乗り帝都を回っていた。
 二人が手を振ると、皆喜びながら手を振り返してくれる。
「アステール帝国の方々が私を受け入れてくれて本当に安心したわ」
 ジュエル王国のルベライト男爵家に生まれたマリナはそれが不安だった。
 アステール帝国の学園では皆受け入れてくれたが、大多数の国民はどうなのだろうと思ったのである。
「マリナ、君は光の魔力を持っているだけでなく、民にも寄り添える。そんな君を拒絶する者はいない。というか、君を拒絶する者は俺が許さない」
 アルジャノーンはフッと微笑んだ。
「ありがとう、アル」
 マリナは嬉しそうに表情を綻ばせた。
 そして、結婚パレードは無事に終わるのであった。


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「マリナ様! いえ、皇太子妃殿下だったわね! ご結婚おめでとう!」
「ありがとうございます、エヴァンジェリン様」
 マリナはエヴァンジェリンに結婚を祝われ、嬉しそうに微笑む。
 この日の主役はマリナなので、エヴァンジェリンは華やかだが無難な髪型をしていた。
「皇太子殿下、ご結婚おめでとうございます。皇太子妃となった彼女は一応義理ではありますが僕の妹ですので、どうぞよろしくお願いします。妻のエヴァンジェリンも、彼女を大切に思っていますので」
「ありがとう、ヴィクター。マリナは俺が幸せにする」
 ヴィクターの言葉にアルジャノーンは頼もしげに頷いた。

 ちなみに、ヴィクターとエヴァンジェリンはマリナ達より学年が一つ上なので、去年卒業と同時に結婚したのだ。

「マリナ、結婚おめでとう! お前の幸せをルベライト男爵領から家族全員で祈っている! アルジャノーン殿下、マリナをよろしくお願いします!」
「幸せになるのよ、マリナ。アルジャノーン殿下、ふつつかな娘ですがよろしくお願いします」
「マリナ、俺達はいつでもお前の味方だぞ。妹を頼みます、アルジャノーン殿下」
「皇太子妃の立場だと難しいかもしれないが、たまには連絡くれよな。アルジャノーン殿下もこの先ご無理をなさらないでください」
 マリナの生家、ルベライト男爵家の家族もマリナとアルジャノーンの結婚を祝いに来てくれていた。
「お父様、お母様、お兄様方、ありがとう。私も、みんなの幸せをアステール帝国から願っているわ」
 マリナは家族からの温かい言葉に微笑み、薄紫の目から涙をこぼす。
「彼女はこの先も俺が一生かけて幸せにしますから、ご安心ください」
 アルジャノーンは頼もしげにマリナの肩を抱いた。
 家族や親しい仲間達から祝福されたマリナとアルジャノーン。
 二人は幸せに包まれていた。
 そしてこの先、二人は協力してアステール帝国に平和と幸せをもたらすのであった。