庭園でのいざこざが過ぎ去り、私は執務室へと足を運んだ。姫である私にも公務がある。
来月おこなわれる王宮主催のお茶会。
私はその総指揮を任されている。今日はお茶会で提供するメニューを試食・決定する事になっていた。
執務室ではすでに数人の貴族たちが働いている。
貴族たちは入室した私に気付くと、手を止め頭を下げた。私は部屋の誰にともなく会釈を返し、奥の席へと向かう。
「ティアナ姫」
白髪で長身の、渋みのある男性が私を呼び止めた。
「マーシャル公爵」
この国で一番の貴族であるマーシャル公爵。
彼は私が生まれる前から先代の皇帝夫婦、つまり私の両親に仕え、この国を支えてくれている。
そして。
「先ほどは愚息がご無礼を」
マーシャル公爵はそう言って深々と頭を下げた。
そう。彼はルシウス様のお父さまなのである。
「申し訳ございません、姫様。日頃から言い聞かせているのですが、あの馬鹿息子は恐れ多くもすぐ姫に失礼な真似を」
マーシャル公爵が苦々しい顔をする。「失礼な真似」とは庭園での情事……ではないけれど、密着していた事だろう。誰かから庭園でのやり取りを耳にしたに違いない。
来月おこなわれる王宮主催のお茶会。
私はその総指揮を任されている。今日はお茶会で提供するメニューを試食・決定する事になっていた。
執務室ではすでに数人の貴族たちが働いている。
貴族たちは入室した私に気付くと、手を止め頭を下げた。私は部屋の誰にともなく会釈を返し、奥の席へと向かう。
「ティアナ姫」
白髪で長身の、渋みのある男性が私を呼び止めた。
「マーシャル公爵」
この国で一番の貴族であるマーシャル公爵。
彼は私が生まれる前から先代の皇帝夫婦、つまり私の両親に仕え、この国を支えてくれている。
そして。
「先ほどは愚息がご無礼を」
マーシャル公爵はそう言って深々と頭を下げた。
そう。彼はルシウス様のお父さまなのである。
「申し訳ございません、姫様。日頃から言い聞かせているのですが、あの馬鹿息子は恐れ多くもすぐ姫に失礼な真似を」
マーシャル公爵が苦々しい顔をする。「失礼な真似」とは庭園での情事……ではないけれど、密着していた事だろう。誰かから庭園でのやり取りを耳にしたに違いない。