それからというもの、ミルガルム帝国はお姉さまが国政を取り仕切り、ルシウス様が外交のすべてを取り仕切るという、二人三脚の政治スタイルとなった。
 そして私は――。

「お言葉ですが女王陛下、ティアナ姫への愛はこのルシウス・マーシャルの方が勝っております!」
「馬鹿を言うなルシウス。私こそがティアナを一番愛している!」

 言い争う二人の間に割って入り、私は両手で二人を制した。

「ルシウス様、お姉さま! あまり争っていますと『ティアナポイント』を減点しますわよ!」

 私の一言に二人が青ざめる。

「そ、それだけはご勘弁くださいティアナ姫。せっかく先日の外交で100ポイントまで残り3ポイントになったのです!」
「そうだぞ、ティアナ! 私だってもうすぐ100ポイントなのだ!」
「じゃあ喧嘩をしないでください」

 二人はしょんぼりしながらそれぞれ執務に戻っていく。
 ティアナポイント。
 仕事を頑張ると1ポイントずつ加点され、喧嘩をすると減点される。100ポイント貯まったら、私を一日好きにしていいというゲームだ。
 このシステムを導入してからというもの、二人はさらによく働いている。

 夕刻。
 仕事の合間にルシウス様に誘われ、私とルシウス様は中央庭園を訪れた。
 色とりどりの花が咲き誇り、綺麗だ。

 ベンチに座りながら、ルシウス様が私を自分の膝の上に乗せた。後ろから私を抱きしめ、私の髪に唇を這わせている。

「ティアナ姫は良い匂いがしますね」

 ルシウス様がうっとりと言う。私は振り向いて、彼の首筋に自分の顔を近づけた。

「それはルシウス様もですわ。甘くて、良い匂いがします」

 ルシウス様と触れ合うこのひと時が、私は大好きだ。
 目を閉じ、ルシウス様の香りを堪能しようとする。すると、不意に何かが唇に触れた。驚いて目を開ける。私の視界がルシウス様でふさがれている。
 視界だけではない、私の唇も、ルシウス様の唇でふさがれている。

「……! ん、ん……」

 驚いてルシウス様の胸を押しのけようとすると、ルシウス様はもっと力強く私を抱きしめた。身体は強引なのに、キスは怖いくらいに優しい。
 何度も唇を重ね、快楽に落ちていく。

「愛しています、ティアナ姫」

 ルシウス様が私を見つめて言う。綺麗な赤い瞳に、幸せそうな顔する私が映っている。

「私も、愛しています。ルシウス様」

 私の返事を聞いて、ルシウス様は満足そうに笑った。そしてまた、私の唇を奪う。
 心地よい。満たされる。幸せな、熱。
 私たちは互いに愛を感じながら、ゆっくり、何度も、その愛を確かめ合った。