――そして私たちは、マーシャル公爵家の別荘で一夜を共にした。

 ◇

 私たちは翌朝、南国の王と食事を共にし、そのまま王宮へ王をお連れした。
 王宮では会談の準備が整っており、今はもう滞りなく話し合いが始まっている。

 王をお連れした時、お姉さまがこちらを苦々しい顔で見ていた。これは後でお説教だろう。そう察したものの、私とルシウス様は逃げも隠れもせず、プライベートルームで会談が終わるのを待っている。
 お姉さまなら、怒り心頭でナイフを振りかざしながら現れたとしても不思議はない。
 私はルシウス様の手に指を絡ませた。
 怒られても、仕方ない。
 そうこうしているうちに、ついにプライベートルームのドアが開いた。

 お姉さまが入ってきて、私もルシウス様も思わず身構える。
 お姉さまはルシウス様の前に立ち、身をかがめた。

「――ルシウス・マーシャル。すまない、助かった。ありがとう」

 お姉さまが頭を下げている。
 ルシウス様に向かって。