ルシウス様が私を商店へ案内する。
 店主はルシウス様を見るやいなや、楽しそうに談笑を始めた。これがルシウス様の人柄だ。

 ルシウス様の頼みで、店の奥から高級そうな桐の箱が出てきた。中身は貴重な漆の器。とても高級で、本来ならば遠くの大陸でしか購入できないそうだ。
 それでもルシウス様の頼みならばと、店主は快く販売してくれた。

 ルシウス様は凄い。
 それを今、私は実感している。

 ルシウス様は日頃から多くの人と関わり、縁を繋ぎ、絆を作り上げてきた。だからこそ、不測の事態に対応する基盤が出来ている。

 南国の王の宿泊先へたどり着き、ルシウス様は王に到着が遅れたことを詫びた。
 気難しい方だと聞いていたけれど、王はルシウス様の顔を見るなりパッと笑顔になって「気にするな」と豪快に笑う。
 そのままルシウス様と私、王の一行は、丸一日ミルガルム帝国を観光した。南国の王はこの日を楽しみにしていたと何度も口にしている。本当にその通りなのだろう。心から楽しんでいる事が態度から伝わってくる。

 南国の王からすれば、この数日は不安だったはずだ。
 いつも会いに来るルシウス様が現れず、音沙汰もない。不快に思って当然である。
 同時に、ルシウス様の偉大さも痛感した。人知れずここまでの関係を築いていたルシウス様は、やっぱり凄い。

 一日遊び終わると、私たちは南国の王と別れた。
 明日の朝また、ルシウス様が会談前に南国の王を迎えに行く。

 それまで私とルシウス様は城に戻る……かと思いきや、城下町の一角で私はルシウス様に呼び止められた。

「ティアナ姫、今夜はこのまま二人で過ごしませんか」