「お前たち! 鍵を開けなさい! さもなくば私はここで自殺します! お姉さまに言いつけようとしても自殺するわよ! 騒ぎを起こしたくなかったら、さっさとルシウス様の牢を開けなさい!」

 私の怒号が地下牢にこだまする。
 やればできる! 私にだって!
 近衛兵たちはうろたえながらルシウス様の牢の鍵を開け、中からルシウス様を出した。

「ティ、ティ、ティアナ姫! なんという無茶を!」
「無茶ではありませんわ。出来る事をしたまでです。さ、ルシウス様。南国の王の元へ走りますわよ! 近衛兵たち! 私たちが城の外へ出られるよう護衛しなさい! さもなくば……」

 私は短剣を自らのどに突き付けた。ぷつりと音がして、私の首からわずかに血が流れだす。

「かっ、か、か、かしこまりました! 城の外へ誘導いたします! 姫様、どうか剣をお納めください!」

 兵は今にも泣きそうだ。私は自分の首に短剣を押し当てたまま「早くしなさい!」と兵たちを誘導する。
 ああ、感じたことのない高揚感。私、なんでも出来そう!

 無事に城を出ると、私は短剣を太もものホルダーへ戻した。
 ルシウス様は牢を出てからほぼ無言である。

「ルシウス様? どうかされました? もしかして私の事、嫌いになりました?」

 私は心配になって、ルシウス様へ問いかけた。ルシウス様は茫然とした表情のまま、無言で首を横に振っている。そのうち、ふふっと笑い出した。

「いえ、最高です、ティアナ姫。凄すぎてあっけに取られてしまいました」

 ルシウス様が私を抱き寄せ、ギュッと腕に力を入れる。そしてすぐ、身体を離した。

「ではティアナ姫、南国の王の元へ急ぎましょう! まずは手土産を買って、王の宿泊先へ向かいます」