翌日。
 王宮はてんやわんやだった。
 明日予定されていた南国との会談が、急遽中止になりそうだったからだ。

「どういう事だ!」

 お姉さまの激が執務室に飛ぶ。

「も、申し訳ございません女王陛下。先方が急遽、会談をキャンセルしたいと」
「だから! それが何故かと聞いているのだ!」

 怒鳴りつけたところで、その理由は誰にもわからない。ただ南国の国王が機嫌をそこねている、という情報しか入って来ていない。

「お姉さま、これこそ延期が良いのでは?」

 無理に外交を進めて、更なる亀裂が入ってはいけない。我慢の時ではないかと私は考えた。

「今日は延期して、またよい頃合いを見つけましょう、お姉さま」
「それは無理だ、ティアナ。今日は帝国南方の治水問題を話す予定なんだ。今日話をつけなければ、雨季までに治水が間に合わない」

 ミルガルム帝国の南方には大きな川が流れている。ここで治水工事をおこなうと、南国に流れる川の水量に変化をおよぼす。勝手な治水工事で南国の人々を苦しめるわけにはいかない。

「だいたい、南国の王はなぜ急に機嫌を損ねたのだ!」

 お姉さまが頭を抱える。