「ルシ……マーシャル公爵子息はどうしてこちらのお店に来たのでしょうか。北東諸国の品はこの国ではなかなか手に入らないと聞きました。公爵子息は、何故この店に北東諸国の品の取り扱いがあると知っていたのですか?」

 それは、この店主が北東諸国とのパイプだからではないのか。
 だからここに北東諸国の品があることを知っていた。帝国の情報と引き換えに、お茶会の資材集めを乗り切ったのではないか――。
 私の質問に、店主はハハと軽く笑う。

「以前買い付けにいらした時に、近々北東諸国の品を入荷すると話したんですよ。公爵子息は普段から、諸外国の品を沢山買っていかれますので」
「公爵子息との付き合いは長いのですか?」
「はい、公爵子息が幼い頃からお得意様です。凄い方ですよ、あの方は」
「凄い?」

 どういう意味か尋ねる前に、店主は嬉しそうに語り始める。

「外交が得意なのですよ、公爵子息は」

 外交という言葉に、私はドキリとした。

「まだ10歳かそこらで才能を開花させていました。あの方ほど諸外国と器用に付き合える方はいません。あの方こそ国交の要です」

 店主の言う「国交」は、まさか、諸外国に依頼されたスパイ活動――。
 私は声を震わせ尋ねた。