私は資料に手を伸ばした。どれも諸外国の要人に関わる資料で、ルシウス様の密会の記録が残っている。

「ルシウス様が、スパイ? そんな、この資料だけでは、証拠とは……」

 手が震えて、資料を取り落としてしまった。拾おうとしても、足が震えて上手くしゃがめない。恐怖心がぞわぞわと身体を駆け巡る。

「ティアナ、お前おかしいと思わないのか?」
「何が、ですか?」

 お姉さまは腕を組み、ふうと息を吐いた。

「この国で北東諸国の品々を入手するのは簡単ではない。茶会開催の3日前に急遽準備を始めて、品物をそろえられると思うか? どう考えてもおかしいだろう」
「それは! ルシウス様は商家と交流があったからと」
「その交流というのが、スパイ活動ではないのか?」
「……え?」