「どういうことなのですか、お姉さま!」

 私はルシウス様投獄の話を聞き、急いでお姉さまの元へ駆けつけた。
 お姉さまはさまざまな書類に決裁の判を押しながら私を軽く一瞥する。

「どうもこうもない。犯罪者を捕らえた。それだけだ」
「それがどういうことなのかと聞いているのです! お姉さま! ルシウス様が何をしたと言うのですか!」

 私は自分でも驚くくらい声を張り上げていた。決裁を待つ貴族たちがバツの悪そうな顔で視線をそらしている。そんな空気も、今の私には関係ない。
 お姉さまの机を両手でバンと叩くと、お姉さまは面倒くさそうにため息をついた。

「ルシウス・マーシャルはスパイだ」

 お姉さまが鋭い眼光を私に向けて言う。

「……スパイ?」

 言葉を繰り返すしか出来なかった私に、お姉さまはいくつかの資料を突き付けた。外交の資料。先日のお茶会に関わる資料もある。

「これはルシウス・マーシャルが引き起こした事件の数々だ。あの男は我々の知らぬ所で諸外国と様々な繋がりを持っている。……スパイという事だ」