大広間に着いた私とお姉さまは、招待客を出迎え挨拶を交わした。
 会場には黄色や緑の草花が所狭しと並んでいる。どれもこれもルシウス様が手配してくれたものだ。
 花のアーチをくぐりやって来た招待客は、みなその草花を褒めた。センスが良い。美しい。その言葉はそっくりそのままルシウス様に贈ろう。

 お茶会といってもただ談笑する会ではない。
 帝国がおこなってきた国政の成果を披露し、普段関わりの無いこの国の主要な人物――商工会であったり教育関係であったり――からの信頼を得る目的がある。
 今回は北東の国々との交易の成果をアピールする予定だ。

「みなさま、お集り頂き光栄です」

 みなが着席したあと、私は全員の前で挨拶をした。

「本日の調度品はすべて北東諸国から集めた物でございます。北東諸国は絹織物が盛んです。ナフキン、テーブルクロス、どれも北東諸国から取り寄せた絹を使用しています」

 私が今日の会場の説明を始めると、招待客は興味津々といった様子でそれらを眺め始めた。「これは美しい」「手触りが良い」と口々に賞賛の声が飛んでくる。
 私は会場の隅で全体を眺めて立つルシウス様に目をやった。ルシウス様も手ごたえを感じるように頷いている。