「ティアナ姫、恐れ入りますが茶会の資材についてもご判断を」
「あ、え、ええ。そうですわね」

 商船が遭難という事は、乗っていた品物も届かない。
 そう、私は姫。こんな時でも帝国主催のお茶会の責任を果たさなくてはならない。
 食材、花、テーブルクロス。手に入るもの、代用品を探し、手配して、それから……。
 机に向かっても、文字が頭に入ってこなかった。
 何をしなければいけないのだろう。手順が、何もわからない。

 一緒に仕事をおこなっていた貴族たちが口々に何か発するたび、私の心臓はバクバクと鼓動を早め続けた。
 ああ、何も理解できない。

「お、お姉さまに相談を……」

 私は逃げるように執務室を退室した。自分を落ち着かせるため、すがるように皇帝の執務室を目指す。いつもの廊下が妙に長く感じた。

「ティアナ姫!」

 そんな時、聞きなれた声が廊下に響いた。