ルシウス様の偽物の愛に屈しない。
 そう決めた私はその日から、ルシウス様をのらりくらりとやり過ごすようになった。

 ……の、だが。

「ティアナ姫! このルシウス・マーシャル、姫のために北方の大陸から取り寄せた焼き菓子をお持ち致しました」

 ルシウス様はまったくもってめげなかった。
 毎日数時間おきにルシウス様は私の元を訪れ、様々な貢物を持ってくる。
 お菓子、小物、音楽、洋服、化粧品、アクセサリー。そして、ルシウス様の愛の言葉。ありとあらゆるものが私の前に並ぶ。

 物で釣ろうとするのね。

 ルシウス様の行動ひとつひとつが私の心を冷めさせる。愛が無いから物で釣る。そう思ったら虚しくて、悔しい。
 私はお姉さまの真似をして、冷静にルシウス様を見据えた。

「ごきげんよう、ルシウス様。こういった事はやめて頂きたいと、先ほども申し上げたはずです。おやめください」
「嫌です」

 ルシウス様は私の言葉など聞きやしない。「私を支える」という自分の使命さえ全う出来ればそれで良いのだろう。私の気持ちなんて無視。それこそ、私を本心で愛していない証拠だ。