「そんな男など忘れてしまえばいいのさ、ティアナ。お前を心の底から愛しているのはこの世で私だけ。ねえ、ティアナ、私と二人でこの国を治めていこう。二人だけの国を作ろうじゃないか。男の事なんて、忘れてしまえ」

 お姉さまの誘惑は魅力的なようで、そうでもなく、なんとも言い難い提案だった。小悪魔みたいなお姉さまの笑みの向こうに悲哀が見える。それはお姉さまの運命によるものだ。
 10代前半で両親を亡くし、女帝として国を治め始めたお姉さま。自らの人生を犠牲にしてきたお姉さま。自我を抑えつけられ、私を愛でる事しか許されなくなってしまったお姉さま。

 私はお姉さまに向き直り、彼女を両手で優しく包み込んだ。

「そうですわよね。二人きりの肉親ですもの。協力していきましょう、お姉さま」

 私を本当に愛してくれるのはお姉さまだけ。それなら私もお姉さまだけを愛していこう。それで良い。それが良い。

 私はルシウス様の偽物の愛になんかに屈しない。
 私とお姉さまは互いにエネルギーをチャージするよう抱きしめ合った。