次の日の朝、克己さんがうちまで送ってくれた。
「無理すんなよ。なんかあったら言っておいで」
「ありがとう、克己さん。貴教さんにもよろしく言っておいて下さい」
 私のアパートの前まで来たら、克己さんはなんだか視線を合わせないでいる。
 どうしたのかな?

「敬語がさ……そのうち自然になくなるぐらい、俺はチョコちゃんと仲良くなりたい」
「えっ?」
「……じゃあね。お大事に」
「ありがとう、克己さん」

 克己さんは私が部屋に入るまで、待っていてくれた。
 気恥ずかしい気もしたけど、嬉しかった。




 部屋に戻るとがらんとしてた。
 一人だけの部屋。
 私一人だけ。
 
 もう熱はなかったけどまだ気怠《けだる》さがあったから、ベッドに横になろうと思った。


 朝ごはんまで用意してくれてた、貴教さんと克己さんにどうお礼を言ったら良いの?

 私はベッドに仰向けなって、天井をじっと見つめた。涙が出た。
 貴教さんと克己さんの二人があまりにも優しくて温かくて、感動したみたい。


 思い出してみる。
 貴教さんの作ってくれたリゾットを食べたら、とっても優しい味わいだった。
 トマトコンソメ味で、セロリと玉ねぎが細かく刻んで入っていたなあ。

 器が熱すぎない。

 木のスプーンで少しずつフウフウと冷ましながら、ゆっくりと口に入れて食べたら、じんわりと優しい気持ちが伝わってきた。





 瑠衣からラインメールが来て、話したいことがあるからどうしても今夜泊まりに来たいと言う。

 明日は一緒の派遣先だったから、二人で会社に向かえるし、私も瑠衣のことが気になっていたから、「良いよ」とメールの返事を返した。

 瑠衣が来る夕方まで、ゆっくりしよう。
 私は眠りに落ちていた。