王史郎は、基本あまり喋らない。
そして表情筋が動かない。
いわゆるクールってやつ?

でも、さっき夜道で笑ってくれたよね?
あの時、優しい笑みを浮かべてくれた王史郎を、まだ覚えている。


「そう言えば学生だろ」

「学生……うん。私、中学生」


一瞬、何を言われているか分からなかった。疑問符がないと、相手の意図って汲み取りづらい。


「明日から、どうすんだ」

「え、明日?」

「月曜日」

「げつ、……」


ようび――と消えていく語尾とは反対に、増していく不安を取り除くように。王史郎は、私の頭上に手を置いた。


「ま、明日考えりゃいいか。
じゃ、先に風呂どーぞ」

「あ、ぇ、」


なでられた頭に残る体温に、自分の手を重ねる。

なんか王史郎って、大胆だよね。よく触ってくるというか……ふつう戸惑わない?私が変に意識してるだけ?


「王史郎って謎が深い……そういえば、王史郎の苗字って何なんだろう?まだ聞いてなかったや」