いくら緊急事態とは言え、軽率だったかな?
イケメンと二人きり、ひとつ屋根の下なんて!


「お、おおお、お邪魔します!」

「さゆ、もう遅い時間だから静かに」

「す、すみません……」


王史郎を見ると、眉を下げて笑っていて。
その顔に、胸の奥がキュンって音を立てる。

静かな夜。
だけど私の心は、ちょっと騒がしかった。



‪‪‪☪︎·◌˳𓇬‬




「2階のココがさゆの部屋、隣の部屋が俺。荷物は明日買いに行こう。それまでは、俺のだけど我慢して使って」

「ありがとう。ごめんね、何もかも借りてしまって」


手の中には、今日着るはずのパジャマ……ではなく、王史郎の服がある。「使ってないから」と言われたけど、ほのかに甘い香りが鼻をくすぐる。

というか家の中ぜんぶが、いい匂いだ。私の好きなお花の匂い。


「これは、バラかなぁ?」

「え?」


パッと顔を上げた王史郎は、すぐに口を閉じる。何か言いたそうにしたけど、代わりにトイレやバスルームの説明を始めた。


……王史郎を見ていて、分かったことがある。