イオくんも毒牙を抜かれたのか「はぁ~」と、その場に座りこむ。銀髪の頭頂部を見られるなんて貴重だから、しばし観察。


「昔から変わってないんだね、アイツのお人好しは」

「昔から?」

「……なんでもないよ。
ん?」


顔を上げたイオくんは「マズイ」と、私の腕を掴んで立ち上がる。


「え、なに?なになに?
私、なにかマズイこと言っちゃった!?」


王史郎の双子の弟って分かってから「仲良くなりたい」って思っていたけど……よく考えたら、イオくんも私の中の宝石を狙ってる一人だった。

今度こそ、無理やり取られるかも――!?


「逃げるよ」

「へ?取るんじゃなくて?」

「騎士団が来た。あんな奴らに捕まってみなよ。さゆの宝石だけじゃなくて、さゆの魂までとられちゃうよ」

「た、魂!?」


それって、つまり……死ぬってこと!?

青い顔で唇を震わせる私を、イオくんは切れ長の瞳で覗き込む。


「魂とられたくなきゃ、俺と逃げて」

「え」

「それとも……王史郎じゃないと嫌?」