素早く私から距離をとったイオくんは、熟れたトマトみたいに真っ赤になった。「ウッ!」その色味に、思わず昨日の酸っぱさを思い出す。

でも……過去のトマトより、今のイオくんだよ!
さっきの独り言、どいういうこと?


「もしかしてイオくん、本当は王史郎のことが好きなの?」

「は?そんなわけないでしょ。バカなのー?」

「でも王史郎は、イオくんのこと好きだよ?」

「――は!?!?」


赤から青に、青から赤に。イオくんの顔色が、ミラーボールみたいにクルクル回る。


「イオくんが突っかかって来る理由を〝俺に遊んでもらいたいんだろ〟って言ってたよ。自分が嫌われてるとは、微塵も思ってないみたい。むしろ〝兄弟ケンカの延長線上〟くらいに捉えてるっぽかった」

「う、うそでしょ?そんなバカいるの?」

「うん。いたの」


あの時の王史郎を思い出すと、思わず笑っちゃう。真顔だったのが、余計に。

王史郎って一人暮らししてるし、美味しい料理も作れるし、しっかり者かと思いきや……天然なんだもん。純粋、というのかもしれないけど。