素っ頓狂な声を出すイオくん。目をパチクリさせた表情は、なんとなく王史郎に似ている。


「昨日ね、王史郎にカレーとサラダを作ってもらったんだけどさ。トマト嫌いって言ったのに、わざとサラダに入れられたの。しかも王史郎の分まで食べさせられて、まいっちゃった」

「……すごくどーでもいいんだけど」

「でね王史郎って、ご飯の時、よくイオくんの話をするんだよ。昔イオくんが食欲旺盛だったって聞いてさ。イオくんも私と同じで、わざと王四郎に嫌いな物を食べさせられたかな?って聞きたかったの」

「……へ?」


ピタッと、動きが止まったイオくん。
「おーい」と、顔の前で手を振っても無反応。
代わりにブツブツ聞こえる「何か」。

それは、少し赤ら顔になったイオくんの独り言だった。


「王四郎が、俺のことを、話す?
なんで?俺、こんな嫌な奴なのに?」

「ん?」

「もうとっくに嫌われてると思ったのに。
あぁ、違う違う。
こんなこと誰かに聞かれたらどうするの恥ずかしい」

「イオくん。ごめんけど……丸聞こえだよ?」

「――は!?」