「あの、お名前きいてもいいですか?」
「王史郎」
おうしろう……。
漢字を聞くと、なお驚く。
こんな爽やか系イケメンに「王史郎」は、ちょっと意外だ。
「アンタは?」
「宇佐美さゆ、です」
「じゃあさゆ、行こ。俺の家こっち」
輝く宝石がハマった指が、クイッと動く。この暗闇を照らす懐中電灯のようで、見るとなんだか安心しちゃう。
「なんで笑った?」
「え!笑ってました?」
「笑ってたよ」
ふっ、と。目を閉じながら横を歩く男性――王史郎の髪が、夜風でなびく。
その時、王史郎の耳にも、光が宿った。見ると、金のピアスが一粒ついている。きっと反対側も同じ物がついているんだろうな。
「王史郎って、アクセサリー好きなんですか?」
「いや、魔除け。っていうかタメで喋れよ。
俺〝合わせられる〟し」
「?、はい」
魔除け?
合わせられる?
言葉の意味は理解できなかったけど、素直に頷く。