でも王史郎は「腹減ったー」と、何事もなかったように自分の席に戻った。……あれ?吸わないの?

不思議に思って固まっていると、カチャカチャと食器の音。……本当に食べ始めちゃった。


「食わないの?」

「た、食べる」

「ぼーっとしちゃって、どうした?そんなに吸血してほしかったか?」

「ち、違うよ!」


カッと熱くなった顔を冷やすように、みずみずしいトマトを口に入れる。

す、酸っぱい……!
でもコレが最後のトマトだ、がんばれ私!

トマトの汁がもれないよう上手に口を動かし、なんとか胃に押し込んだ。


「うぅ、しばらくトマトはいいです……」

「んな事いうなよ。ほら、口開けろ」

「えぇ……⁉」


目の前には、王史郎の手――につかまれたトマト。

なんと彼は、私がトマトを食べたのを見て、三個食べたなら四個も同じ、と。自分のトマトを私に寄こしてきた。