つるっ、と。箸で掴んだ最後のトマトが逃げる。そして黄緑のクッションへ思い切りダイブした。

さっき何となく避けた話題だけど……やっぱり王史郎も、人の血を飲むんだ。じゃないと「美味しい」なんて言わないよね。


「王史郎はさ……私の血も、飲むの?」

「……」


ドギマギ、ドンドン、バクバク――あらゆる心臓の音が鳴る。

涼しい顔の王史郎にも、この音が聞こえてるかな?もしそうだったら恥ずかしい……でも血を吸われる方が、恥ずかしい気もする!


「どこがいい?」

「え?」


王史郎は、持っていたスプーンを置く。
そして真っすぐ私を見た。


「首、二の腕、手首。それか足?あぁ、背中もあるか。噛み跡は消えるから、俺はどこでもいいけど」

「え、え?足?背中?」


そんなところから血って吸えるの⁉

頭の中で蚊を想像する。蚊はありとあらゆる場所を刺してくるけど、吸血鬼もそうなんだ。