「おーい、さゆ。出来たぞ」

「い、いただきます……っ」


パンッと手を合わせて、お辞儀をする。私の分まで作ってくれるなんて、感謝感謝だ。

目の前には、美味しそうなカレーライス。アンド、サラダ。黄緑のレタスの上に映える赤は……トマト。

あ、あれ?


「さっき私の嫌いな物を聞いたよね?」

「聞いたな」

「あ、わざと乗せた感じ?」

「そうだな」


コクリと頷きながら、王史郎は添えられたスプーンで、福神漬けをお皿に移す。結構モリモリに盛ってる。もちろん私も好きなので、王史郎からスプーンをもらって、同じように入れた。


「この赤は好きなんだけどなぁ……」


福神漬け、トマトを順に見る。口をへの字にする私とは反対に、王史郎はククッと、意地悪く笑うだけ。

うぅ、作ってもらってる身分で残せないし。
頑張って食べよう……っ。

えいっと。勢いよくトマトに箸をのばす私を見て、王史郎から「おぉ!」と感嘆の声。控えめに拍手までしてくれた。

そんなに褒めてくれると嬉しいな。
調子に乗って、お皿の上のトマトを一気にやっつける。


「好き嫌いがない人間の血は美味しいからな。トマト、全部食べろよ」

「へぇ!?」