「さっきみたいに色んな奴に狙われるからな。
さゆは、俺のそばを離れるの禁止」
「!」
私のこと大事にしてくれてるって、勘違いしちゃいそうな言葉。……本当は、私の中の赤い宝石を心配してるだけなのに。
「わ、わかった……」
「俺のそばを離れない。ハイ、復唱」
「お、王史郎のそばを、離れない……!
これでいいでしょ?」
何を言わされてるんだろう!
混乱する私をよそに、王史郎は満足気だ。瞳を細めるほど、ニッと口に弧を描く。あぁ、やっぱかっこいいな。
「じゃあ約束したからな……って、なんで顔が赤いんだよ?」
「え⁉」
いつの間にか顔くなっていた顔を、手で覆う。王史郎は不思議そうに「風邪?」と聞いたけど……この赤面の正体を、私は知っている。
きっと王史郎の笑顔を見たせいだ。カッコいい人の笑顔は、心臓に悪い。
「王史郎って……ズルいよね」
「なにがだよ。そう言えば、嫌いな食べ物あんの?」
「トマト、と、ミニトマト……」
「ふ、おこちゃまめ」
無邪気な顔で笑われた。いかにも自分は「嫌いな物はありません」って顔だ。