「王史郎、ワタシ、ニゲタイ……!」
「お前なぁ……」
呆れた顔が、目の前に現れる。まるで逃げ腰の私を責めるような視線だ。
でも、こんな緊迫した状況で、ただの人間が耐えられるわけないよ!しかも不安と恐怖で、なんだか気持ち悪くなってきちゃったし!
私の顔が綺麗なブルーハワイ色に染まるのを見て。「ゲ」と、王史郎の口元がひくつく。
「吐くなよ?すぐ家に帰るから、それまで我慢しろ」
「うぅ……」
ひょいと私をお姫様だっこした王史郎は「そういうことだから」と。まだ眉間にシワを寄せるイオを見た。
「俺らは帰るわ。
イオも暗くならないうちに帰れよ」
「な!子供扱いしないでよ、吸血鬼ごときが!」
「はいはい、じゃーな」
ヒョイ、と窓に足をかけて外に出る王史郎(+私)。走ってるんだか飛んでるんだか分からない速さで、どんどん学校が遠ざかる。
その途中、私たちを睨むイオと目が合った。
一応、王史郎の弟なわけだし、手を振った方がいいかな?――そう悩んでいる間に、イオは消えた。