でも、そんなの間違ってるよ。私は一人っ子だけど、兄弟って憎み合うものじゃないっていう事だけは分かる。
「あなた、間違ってる……っ。双子なら、王史郎と仲良く、」
「……うざ」
ダンッと音がした時。
私の横に、男の足があった。
足で、壁ドンされたらしい。
しかも、強すぎる威力に壁が耐えきれていない。
パラパラと、コンクリートの残がいが足元に転がった。
「誰が、間違ってるって?」
「~っ」
王史郎も王史郎でやばかったけど、この人もそうとうヤバい。王史郎は、ちゃんとストッパーがかかってたもん。ここまではやってOK、ここからはNGっていう境界線が出来てたもん。
さっき、あんなにたくさんの敵を前にしても、王史郎は誰一人殺さなかった。輪っかで縛っただけ――王史郎の中に、ちゃんと境界線がある証拠だ。
でも、この人は違う。
境界線がないんだ。
次に変なことを言ったら、殺されてしまうかもしれない。
――王史郎を呼んで――
本能が、そう叫んでいる。