「おうしろ、助け……っ」


王史郎を呼びたい。
「助けて」って言いたい。

だけど恐怖で震えて上手く声が出ない。プラス、喉の渇きが限界を迎えて声を出せない。さっき理科室にいた時に、一口でも飲んでおけば良かった!

絶望的な状況に、頭から水を被ったように、顔がサアアと青くなる。そんな私を面白そうに見ているのが、目の前の男だ。


「お前の体の中に、二つの血が混じってる。一つはアオイシの血だね。

ハハ、もう吸血されたんだ?いーっぱい飲まれたでしょ?アイツってヒドイからね」

「吸血……?」


契約の時に一度だけ、血を飲まれた。でも、少しだけ。

左手だと思ったのが、まさかの右手だったから。王史郎は驚いて、すぐ口を離したし。


「王史郎は、ヒドくないよ?」

「散々吸血して、飽きたらポイするって有名だよ。お前も宝石を無理やりとられて、その内ポイされるんだろうなぁ。絶望しかないね、大変だー」

「……」


王史郎は、少し言葉が悪いところはあるけど。
でも……この人が言ってることは、違う。

私の知ってる王史郎はチャーハンを作ってくれたり、守るって言ってくれたり……そんな温かい人だ。