恐怖したことを悟られないように、両手をギュッと握り締める。
もちろん男は、私の強がりはなんのその。タンポポの綿毛を飛ばすように、軽く息を吐きながら口笛を吹く。
「あなたは吸血鬼、なんだよね?」
「物わかり悪いなぁ。違うって。
俺は騎士団だよ。吸血鬼を消すのが仕事なの」
「騎士団……?」
「ちなみに俺は、団長ね。
騎士団の中でイチバン偉いの。
そんな俺がさ――」
男の姿が視界から消えたと思ったら、いつの間にか私の隣に立っていた。
逃げなきゃ!と思った時は、もう遅くて――
「こんなシルシ、俺に効くと思う?」
グッと、シルシの上から指を置かれる。
瞬間、焼けるような痛みが全身を走る!
「痛ッ!」
「へぇ、このシルシ。結界の役割もあるのか。残念、これ以上は触れないや」
自分の指先が焦げて茶色くなっているのを、まるで他人事のように見ている。
火傷してるのに、痛くないの?
この人、普通じゃないよ……!