なに?
あたりの空気が、一気に冷えた。
もしかして、この人……吸血鬼⁉

クンと鼻を動かすも、バラの匂いはしない。

……おかしいな。
王史郎は「吸血鬼が近くにいたらバラの匂いがする」って言ってたのに。


「あなた……なに?」

「あれー?もしかして俺が普通の人間じゃないって、分かっちゃった?」


やっぱりそうなんだ。
この人は、普通の人間じゃない。


「もし吸血鬼なら……コレを、見て!」


さっき王史郎から言われた「牽制」の仕方。
首についたシルシが見やすくなるよう、髪を一つにまとめる。

このシルシを見ただけで、吸血鬼は怯えて逃げていくだろうって。王史郎は、そう言ってた。

はずなんだけど……


「はい、残念。逆効果ー」

「……え?」

「俺はねぇ、アオイシが大嫌いなんだよ。
アイツをこの手で倒す日を、ずっと心待ちにしてるんだ」

「ど、」


どういう事……?
この人、王史郎が怖くないの⁉