「にしても、アンタも災難だよな。まさか俺に拾われるなんて、可哀想な奴」

「なんで〝可哀想〟なの?」

「吸血鬼の中で最強だぞ?一番強いんだぞ?つまり、アンタは死ぬまで、俺から逃げられないってことだ」

「その通りだけど……」


でも、災難ではないと思う。災難なのは、私の中に赤い宝石がある事で、王史郎と出会ったことじゃない。


「むしろ王史郎が最強なら、私はずっと守られるってことでしょ?それって災難じゃなくて、最高じゃない?」

「……本音?」

「もちろん、当たり前!」

「……ふーん」


興味ありげに私を見るくせに、興味なさそうな言葉を返してくる。だけど王史郎の瞳が、わずかに細くなった。まるで「喜んでる」みたいだ。

最高って言葉が嬉しかったのかな?
王史郎って、意外に可愛いところがあるんだ。

――なんて微笑ましく思う私の顔が、王史郎は気に入らなかったらしい。「それにしても」と、憎ったらしい目つきを寄こす。


「さゆって夢見る少女だよな。運命だとか指輪だとかさ」

「へ?」

「お子ちゃまー」


ニヒルな笑みが、王史郎の顔に浮かぶ。
か、からかわれた!