「紐に巻きつかれた吸血鬼は、紐を出した奴の命令に逆らえない。つまり俺たちの間で、主従関係が結ばれたって事だ」
「私が〝助けて〟って叫んだら、紐が出た。ということは、私が王史郎のご主人サマになっちゃったの?」
「……そう」
またもや仏頂面。
何で「お前なんかが」って声が聞こえてきそう。
そんな不満げにしなくても……。
お互い不愉快極まれり、だ。
「さっき、まるで王史郎の人格が変わったみたいだった。あれも契約のせい?」
「契約を結ぶと〝ご主人サマ〟を守らないといけない、っていう使命感に支配される。俺が喋って動いてるけど、本来の俺じゃないというか……まぁ、操り人形みたいなもんだ」
「操り人形……」
「だから、せいぜい俺をこき使え。
契約通り、アンタが死ぬまで守るさ」
どこを見てる訳でもない、あてのない視線。淡々と話す王史郎だけど、きっと本心じゃない。
「操り人形は……嫌かな」
「は?」