周りは住宅街なのか、一軒家が建ち並んでいる。もう遅い時間なのか、電気がついている家は疎らだ。

外は街灯が頼りの、心細い暗さ。
だからこそ、気づけなかった。

こんな暗闇に人が紛れているなんて。
私の背後に、静かに立っていたなんて。
声を掛けられるまで、気配すら感じなかった。


「お前、何してんの?」

「ひぅ……⁉」


ビックリして喉がへしゃげた。かなりの恐怖を感じた時、人って本当に声が出なくなるんだ。

恐る恐る振り返ると、真後ろに端正な顔立ちをした男性が立っていた。年は同じくらい……と言っても、着ている服は大人っぽい。白のタートルネックに、黒いロングコート。


「迷子?にしては妙だな」


白シャツの上に紺のカーディガン。
下は茶色のチェックのスカート。
プラス、黒タイツを着る私を見て「寒くないの?」と。許可もなく隅々まで物色された後、質問された。


「寒い、よりも問題がありまして」

「問題?」