「お前が左手じゃなく右手を出したから、契約失敗したんだよ!このバカ!」

「ええ⁉」


まさか私、自分で自分の首を絞めちゃったの!?

頭を抱えていると、王史郎はサッサとこの場を去ろうとする。「付き合ってらんねーよ」と、いかにもな捨て台詞を残して。

もちろん、ココに一人で残されると困る。

非常に困る!


「私を助けるんじゃなかったの!?」

「知らねぇ。勝手に約束やぶったのはソッチだろ。こんなバカに付き合ってられるか。

他の吸血鬼にやられた瞬間、アンタの中身は俺が頂く。それまで暇だから、見学させてもらうわ」

「なっ!」


確かに私が悪いけどさ……でも、そんなの「はい。そうですか」って素直に差し出せるわけないじゃん!

半信半疑だったし、なにより……。
お父さんとお母さんを見てると、憧れちゃったんだもん。

左手の薬指には、噛み跡じゃなくて〝好きな人とお揃いの指輪〟が欲しいって――


「王史郎、行かないで。
私、死にたくない……っ」


憧れの指輪をはめるまでは、死ねない。
だから――