「口約束だけの〝守る〟じゃ、実際に助けるのが面倒で、見殺しにしちゃいそうだし。そのせいでアンタの中の物に消えられたら最悪だし。

だから俺は、無理にでも自分を追い込むしか選択肢がないってワケ」

「……」


ちょっとでも「良い人かも」と思った私が、バカだった。

呆れて左手の薬指を差し出す。

すると王史郎は、ペロリと舌なめずり――まるで「美味しそう」と言われたみたいだ。不覚にも、少しドキドキしてしまう。


「左手の薬指、ここから吸血させて。

そうすれば俺は、お前の言いなり。
お前は俺の、ご主人サマ」

「わ、わかった……!」

「じゃ、いただきます」


パクッと、王史郎の牙が私の皮膚に食い込む直前に。急いで右手と左手を入れ替える。

その結果――

王史郎がかみついたのは、右手の薬指。一滴吸い込んだ時、左右差に気付いた王史郎が、噛んだまま「あ゙?」と唸った。