「ごめん、ソレはちょっと恥ずかしいというか……」

「攻撃を止めてる〝この人差し指〟を、そんなに離してほしいのか、そうかそうか」

「い、今すぐ契約します!」


王史郎の口の前に、噛んでもらう方の薬指をかざす。すると彼のこめかみが、ピクリ。不機嫌にはねた。


「おい、なんで右手なんだよ」

「え、なんでって……!」

「お前、俺のご主人サマになる気ないの?」


ん?
今、なんて言った?


「ご主人様って、なに?」

「この契約は、主従関係を結ぶものだ。
お前が、俺に、命令できる。
〝助けて〟と言えば、どこにいても俺は助けにいく」

「それ王史郎にデメリットしかないじゃん。それなのに、どうして契約してくれるの?」

「……知らん」

「えぇ!?」


フイと視線を逸らされる。
そんな!聞きたかったのに!


「自業自得だ。忘れてるさゆが悪い」

「私が、忘れてる……?」


たまに、だけど。
王史郎は私が知らないようなコトまでも、知ってる口ぶりで話す。

王史郎の言うように、私は何か、忘れているのかな?