「お前がたやすく消そうとしてる物が、何か知ってるか?」
「も、もちろん!」
もちろん、知りません!
「でも私は私の命の方が大事なの!だから王史郎が私を見捨てるというなら、私の中にある物なんて消してやる!」
「……つまり?」
これは「話が通じた」ってことかな?
よし!私が助かるまで、あと一歩!
「私を助けて!」
「……」
「お願い、王史郎!こんな所で一人死んだら……きっとお父さんお母さん、すっごく悲しむ。それは嫌だ」
「…………はぁ」
王史郎がため息をつくと同時に、男子生徒の鎌が、ついに校舎から抜ける。鋭利な切っ先は、私を目指して再び降ってきた!
「キャー!……ん?」
もう逃げられない!
思わず目を瞑ったけど、待てど暮らせど、痛みは襲ってこない。
チラリと瞼を開けると、なんとそこには、
「ったく、早く素直になれっての」
「王史郎……?」
人差し指一本。
それだけで、王史郎は鎌の攻撃を止めていた。