「テレポートをした理由は知らないけど……バラの香りは、柔軟剤とかじゃないの?」

「吸血鬼が近くにいるとバラの香りがするんだよ。お前は、俺から出るバラの匂いに、いち早く気づいた。それは普通の人間には、できない事だ」

「へぇえ……?」


そんなの初耳だよ!

話を聞けば聞くほど混乱する私を見て、王史郎はさらに意地悪く笑った。


「さゆ、お前は普通の人間じゃない」

「普通の人間じゃ、ない?」

「さっきも言ったけど、お前はアレを持ってる〝特別な奴〟だ。全ての吸血鬼が、お前を狙って来るぞ」

「狙われる?」

「そうだ。例えば――俺とかな」


王史郎が私の頭に触れようとした、
その時だった。

――バチン!

雷鳴が響くと同時に、私の胸元が光り始める。

ウソ!
私の体が発光してる!?


「やだ、なにこれ!」

「ほら。言った通りだ。やっぱりお前が〝持っていた〟のか」


心臓を中心に光る体。「止まって!お願い!」と何度も思っていると、不思議なことに光は収まった。

これなら、皆の前に出ていける!
逃げるなら、今だ!