「私は、絶対つかまらないから!」
階段を降りて、休憩時間で賑わう廊下を走る。
この人混みに紛れれば……と思ったけど、いつ私の体が光り出すか分からない。名残惜しいけど廊下を走り抜き、人目のつかない校舎裏に隠れる。
「はぁ、はぁ……っ!」
一体、何がどうなってるの!
王史郎は吸血鬼で、私を狙っていて……他の吸血鬼も、私の中にある「何か」を狙ってるとか?
「は、はは。どこのファンタジーなんだか……」
体育座りで、キュッと体を丸くした。静かな校舎裏に、二限目の開始を告げるチャイムが鳴る。
最悪……。
転校初日に、ズル休みしちゃった。
「……うっ」
お父さんもお母さんもいない。
私ひとりで日本に帰って、知らない人と一緒に住んで。
しかもその人は吸血鬼で、私を狙ってて……。
「もう、やだ……っ」
ポロッと涙が溢れた、次の瞬間。
「おーい。感傷に浸るのもいいけど、死ぬぞ?」
「この声、王史郎……って、えぇ!?」
ズワッと目の前を横切ったのは、大きな鎌。持っているのは、なんと知らない男子生徒。……男子生徒!?