「ハッ!もしかして密会!?」
王史郎に、好きな人がいたんだ――と心のどこかでショックを受けながら。もしもお取込み中なら悪いから、抜き足差し足で階段をのぼる。
すると……変な音が耳に届いた。
「ちゅ、ジュ――ッ」
これ、何の音?
まるで何かを飲んでるみたいな……。
ハテナが全身を回る。激しく脈打つ心臓を押さえながら、階段の影から、目だけ出るよう顔を傾けた。
そして、見てしまった。
一人の女子を、あぐらをかいた足の上に横たわらせ、首に口を近づける王史郎を。
その口から、ニュッと長い牙がのぞいてることを。
その牙の先端に、鮮やかな「赤」がついていることを――
「おうし、ろう……?」
「……」
スゴイ現場を見られた、にも関わらず。
王史郎は動じなかった。
青い瞳も揺れていない。
……あれ?
王史郎の目って、黒色だったよね?