「じゃあ、このまま授業に移るぞー」


先生の声を聞いて、少し経った頃。
私の顔が、滝のようにサアアと青くなる。

しまった、消しゴム忘れちゃった……。

家を出る前に王史郎に散々「忘れ物ないか?」って言われたのに、あんま確認せずに出てきちゃった。

一限の間、書き間違えないように、なんとか頑張る。そして無事に授業が終わり、チャイムが鳴った瞬間。

離れた席にいる王史郎に声をかけ……ようとして、彼の姿がないことに気付いた。


「あれ?トイレかな?」


もしトイレなら声をかけられないな……と思いつつ。一応、教室から顔だけ出す。すると王史郎は、階段を登っている所だった。

あれ?
この階は3階で、最上階じゃないの?
まさか屋上に行ってる、とか?

しかも不思議なことに、王史郎のあとを、一人の女の子がついて行く。おぼつかない足元だ。顔色も悪そうだし……まるでお人形みたい。


「うーん、気になる」


変な光景を見て、考えるよりも先に足が動いた。
あの上に、何かあるのかな?