今日は家に帰ったら出された宿題を早めに終わらせて、サボテンのぼんちゃんに水を上げて、あとは……。

コンビニで買ったミルクティーを飲みながら悶々と帰宅後のことを考えていると、ふと名前を呼ばれた。

「あ! 結(ゆい)じゃん!」

ぱっと声がした方に振り向く。

「海(かい)!」

声の主は佐賀野海(さがのかい)、男子校に通う私の双子の兄だ。

「海も今帰りなの?」

「うん! 結はぼっちで帰ってるのか? 友達まだ作れてねぇの?」

「はあ?! 友達とはちょっと道が違うだけだし!」

「ほんとか〜? 兄ちゃん心配」

そんなの要らない心配だよ。
ちゃんと私にも友達が出来てるもん。

高校生になって早1ヶ月。
友達はまあまあできたし、いつも一緒に過ごしてる子だっている。この間カラオケに行ったばかりだ。

「そういう海はどうなの? 私の心配ばっかしてないでさ」

「横にいるこいつが見えないのかよ」

そう言われ視線を移すとそこにはいかにもモテますっていう感じのイケメンがいた。
おそらく今までで会った男の人の中で一番。

「どうだ、かっこいいだろこいつ。涼谷要(すずたにかなめ)っていうんだぜ」

「……どうも」

若干不貞腐れた感じで話すイケメン、もとい涼谷くん。

「声もいいだろこいつ。どう? 惚れた?」

「はあ? 私彼氏いるから!!」

いくらイケメンだとしても私にはそもそも彼氏がいるのだ。
まだ付き合って3週間くらいだけど……。

「なんだそれ! 俺聞いてねぇぞ!」

「だって言ってないもん!」

「お兄ちゃんなんだから報告しろよ!」

「はあ?なにそれ!」

海とずっと言い合ってると涼谷くんが口を開いた。

「ね、そろそろ帰っていい?」

「ん? ああお前今日用事あるんだっけか! ごめんごめん! 話付き合ってくれてありがとな!」

「ん。別に大丈夫だよ、面白いもん見せてもらったから。それと……」

そう言葉をきると私をちらっと見る。
なによ。

「まあ女にしてはいいんじゃない? それに僕を見てなんとも思って無さそうだし」

何? 惚れたかみたいなこと?
さっきから言ってるじゃん、私彼氏いるって!
それになんなのその言い方!
少し、少しだけむかつく!

「じゃあね、海。それと……誰だっけ? まあいいや頭、ここ髪跳ねてるよ、ださい」

涼谷くんは人差し指を髪にとんとんとさしてながらそう言うとスタスタと歩いて帰ってしまった。

「なんなのよあいつ!! 失礼な!」

「まあまあ、あれがあいつだから。根はいい奴なんだって」


海の友達の涼谷要。

第一位印象はまさに最悪。
この一言に尽きる。