漆黒の長い髪が揺らぎ、仄かな室内は静観する。

閑静で瀟洒なマンション。

高級な家具がアンティークであり、高級な邸宅だと理解出来る邸宅であった。

握り締めるものが、冷たさで応える。

ガッシャン!

トリガを引く音と銃声。

紫煙と火薬が混ざる臭い。

この瞬間が私を駆り立てるのは、血と紫煙に手慣れているからか?

ガガガガ

軽やかに身を躱し、しなやかに動くのは、任務としては容易き事であった。

カルフォルニアナンバー3として、俺は依頼されたエキスパートなのだから。

顔をマスクで覆いながら相棒と視線を交わす。

ライフルを構えながら、指示の合図をされている。

マスクから覗くアイスブルーな双眼と、黒い長い髪は艶やかで魅力的であった。

中東系のマフィアを思わせる男は、エキゾチックに西洋混じりでゾクリと身震い、総毛立つ気迫は暗殺者のようで見惚れてしまう。

西洋の血が混じる男前に、誰もが美貌と思う色男。

女性なら腰砕けな男前であり、誰も聞き惚れるアルトハスキー。

世が世なら王子様である。

ガッシャン

『ジョンソン』

1面まばゆい光が炸裂し、リーダの名を叫んでいた。

閃光弾。

俺は両方の腕で顔を庇い、リーダーを助けようと飛び出す。

パーン

段々と視界が見えなくなり、視界を見極めながら感知する。

閑静な邸宅の物音だけが頼りだ。

『えっ』

視界が奪われようが、戦闘で積んだ感覚と、グラスのサーモグラフィ。

暗視眼鏡のサーモグラフィ頼りに、俺は戦況を見極めようと五感を研ぎ澄ます。

多分目くらまし揺動で仕掛けただけだろうが、相当後ろ暗い邸宅の主は底が知れない任務であった。


ジリリリリ



無数の赤外線と防犯ベルがけたましい。


ターゲットに逃げたら、任務失敗とされる。