私が図書館に行った次の日。
オリヴェルさんが言った通り、朝食にフィテーラが提供された。
昨日とは具が違っていて、とても美味しいと思うけど、夜に考えていたことが頭に残っていて、味わう余裕がなかった。
「あの、何か私がしなければならないことって無いんですか……?」
私は朝食を食べ終わった後、オリヴェルさんに聞いてみた。
元の世界のお話では、瘴気を浄化して欲しいとか、魔物を倒すのに協力して欲しいとか、何かしらの理由があって、異世界に召喚されている。
だから私を召喚したオリヴェルさんにも──この世界にも、何か困ったことがあるんじゃないかな、って。
「いえ。リーディア様は何もされなくて結構ですよ。図書館へ行くなり、庭園を散歩するなりお好きにお過ごしください」
「……え」
まさか何も頼まれないとは思わなかった。
思わず絶句する私に、オリヴェルさんは優しく微笑んだ。
「リーディア様がこの世界に存在してくださるだけで──それだけで十分です」
オリヴェルさんはそう言って、私の手をそっと取った。
まるで、大切な宝物に触れるかのように。