「あ、有り難うございます……。えっと、この世界の常識とか、説明が書かれてる本を探しているのですが……」

 私はオリヴェルさんに嘘をついた。

 本当に探している本は、異世界について書かれた本だけど、そのことを彼に知られるのは何となく避けたかったから。

「そうですね。ではこの世界の仕組みや、人々の生活の様子などが書かれた本でよろしいでしょうか?」

「あ、はい。それでお願いします」

「では、こちらへどうぞ」

 私はオリヴェルさんの案内のその後ろを、さり気なく距離を空けて付いて行く。

 一緒にいたくないと思いつつ、彼が私にとても親切にしてくれるのも、また事実で。

「食事を召し上がっていないと聞きましたが……。何か理由でもおありなのですか?」

 静かな図書館に、オリヴェルさんの柔らかな声が響く。

「えっ?! あ、えっと……っ! その、あまり食欲がなくて……」

 突然かけられた質問に、私はしどろもどろになる。

「食物が心配なら、召し上がる前に”浄化”されるのは如何でしょう? 貴女様自身の神聖力を浴びせれば、毒素は消え去りますよ」

「え、そんな方法が……?」