「私にはリーディア様以上に優先することなどありません。それにこの神殿の者は優秀ですから、逆に暇なぐらいです」

 多忙を理由に断ったのに、あっさりと返されてしまった。

「あ、では司書さん……この図書館を管理している方を教えていただけませんか?」

 オリヴェルさんと二人っきりになりたくない私は、別の人を呼んで貰おうとしたけれど。

「この図書館のことなら私に聞いてください。全ての書物を覚えていますので」

「えっ?! この中の本全て、ですか?!」

 ここの蔵書の数は、市民図書館より多そうだった。

 そんな膨大な数の本を、全て覚えているなんて!

「はい。それにこの図書館は基本、高位聖職者──今は神官長と聖女しか利用出来ませんから」

「えっ……」

 私とオリヴェルさんしか使えない図書館……?!

 こんなに広い図書館なのに、誰もいないことを不思議に思っていたけど……。

「お探しの本がおありでしたら、私が案内致しますよ」

 本当なら、オリヴェルさんの申し出はとても有難いのだろうけど……。

 私は、私を見つめる彼の瞳から──いや、彼から逃れたくてたまらなかった。