それだけで、大分心にゆとりが出来ているな、と思う。

 オリヴェルさんが私をどうするつもりなのか全くわからない以上、なるべく早く、多くの知識を蓄えたい。

 知らなければ、対策すら出来ないのだから。




「こちらが神殿図書館になります。どうぞごゆっくりお過ごしください」

「あ、有り難うございました!」

 私は案内してくれた神官さんにお礼を言うと、図書館の中へ足を踏み入れる。

「わ……まんまファンタジーだ……」

 図書館はどの世界でも共通なのか、たくさんの本が棚に並んでいた。

 そんな見慣れた光景に、私は少しだけ感動することが出来た……ような気がする。

 見たことがないような、この世界の風景には、まだ感動出来ないけれど……。

 いつかは、この世界も美しく感じる時が来るのかな?

 でもその時は、元の世界のことを諦めた時なのだろう。

 だったら私は、ずっと感動出来なくても構わない、と思う。

「えっと、思い付きで来たのは良いけど、文字読めるかな……」

 この世界で言葉が通じたのは、本当に僥倖だった。

 もしあの時、言葉が通じていなかったら……と思うとゾッとする。